藤枝市には、タマムシを人工的に増やしている人がいます。
1年に1度生きているタマムシに触れることができます。
タマムシの生態を詳しく説明していきます。
平成元年より、タマムシに取りつかれ、研究をかさねてきました。
タマムシの人工ふ化に成功したのは、日本で初めてです。
一年に一度、藤枝市で生きたタマムシと触れあうことができるイベントがあります。
タマムシアクセサリーの工房を平成24年に開業しました。
この度、朝日新聞の天声人語に取り上げられました。2019-9-1
藤枝市の田舎で小さな印章店をやっていました。昭和の末期で景気のよいころでした。55歳くらいだったか、将来何かの趣味を持たなくてはということで、なぜかタマムシを飼いたいと思ったのです。
そこでタマムシのことをいろんな図書館で調べてみると、生態に関する本がなく、昆虫の偉い先生に聞くと、日本で飼った人がいないし、飼うことは不可能ということでした。
人の言うことをまともに聞かないくせがあることから、では自分で飼うことに決め、飼いはじめたら飼うことも繁殖することもできました。これが飼いはじめです。
どのようにしてタマムシを捕まえるか。
夏のはじめ、虫かごと捕虫網を持って、エノキの大木のあるところへ行ったけれど捕まえられません。近所の小学生を連れて行ってもだめでした。
そこで自分で捕まえることをやめ、農家の人にたのむことを考えつきました。
農協に知り合いが居たので,有線放送で何度か放送してもらいました。「タマムシ飼います。1匹5000円」と。
30匹の予定が36匹集まりました。さすがに農協です。
これが飼いはじめです。
7月の天気の良い午後2時頃に、エノキの木の周りをとんでいます。
が、なかなか高いところを飛ぶので、捕まえるのが難しい。
枯れ木(サクラとかエノキ)に卵を産みに降りてきたところを捕まえる。
あらかじめ虫小屋を店の裏の畑の片隅の作っておきました。
180cm×120cm。高さ180cmです。
この中へサクラ、エノキ、ウメ、モモ、カキなどの小枝を入れて見ていると、エノキの葉を食べることが分かりました。
観察していると、水もいらず、樹液は飲まず、果物も食べなかった。
ただ、エノキの葉を用意しておけばよし。(花瓶にエノキの枝を入れておきます。できれば新鮮なものを。ただそれだけ)
なんと飼いやすい手のかからない虫だこと
玉虫を飼うということは、成虫に餌を与えることだけではなく畧代
繁殖を意味します。
玉虫を飼い始めて最初の年、2年目は産卵できませんでした。
どこへ、どのように産むのかわかりません。
死んだメスを解剖して、小容器に水を入れ、その中へ腹から出した
卵を入れて、水の中でほぐしながら、卵の数を数えました。
玉虫の個体の大きさに差があり、体長の大きいものは43㎜
小さいものは32㎜くらいで、大きい玉虫の卵は75個、小さい玉虫の
玉虫の卵は35個で、体長の差による1個の卵の大きさに差はありません。
死体から取り出した卵は、受精卵かどうかもわかりません。そこで
本で調べてみると、甲虫は交尾すると精子は、一旦メスの受精囊に入り、産卵するとき卵が一個づつ排出される際に受精嚢の脇を通る時に
受精すると書いてあった。玉虫も同じかもしれない。ならば、交尾
しただけでは受精しないから、無精卵では取り出しても幼虫にはならないだろうと思いました。素人にとって人工授精は、どうしてよいのかわかりません。わからないことは玉虫から教わればよい。職人の世界では、見習え、技術は見て盗むものだといいます。
3年目には、時間がある限りエノキの丸太を入れた虫小舎の側に居て、玉虫の行動を見ていました。
7月下旬、床に転がしたエノキの丸太の上を、メスが産卵管を出し、引きずりながら歩きます。産卵管あエノキの小さな窪みに来ると、歩くのを止め、産卵管の先端で窪みをさぐるように調べます。何度も見ていると。産卵に適した窪みを探しているのだと感じました。
それでは窪みを作ってやれば良い。早速、のこぎりで丸太に切れ目を入れ、見ていると、そこへ産卵することがわかりました。
産卵に成功です。
最初はエノキを使いましたが、その後サクラの丸太にも産卵することがわかり、今では落葉なら、大ていの木に産卵し、幼虫はその木の中で育つことがわかりました。
どのような木であっても、玉虫が産卵した木なら、必ず幼虫が育つに違いない。子孫を残すためには親玉虫は正しい選択をします。
このことは間違いないと、玉虫のメスを信用しています。
産卵する為の木を、7月中旬になると屋外に置いてある虫小屋の床にころがしておきました。虫小屋の四方と天井は家の窓などに使う防虫網を張ってあります。
昼、産卵を確認して夕方、見に行きました。
するとどうでしょう、のこぎりで切り込みを入れた所に産んだ卵に
小さな赤アリが群がっています。更によく見てみると、何匹かは
防虫網の網の目を通り抜けて、行ったり来たりしています。
赤アリの名は知らないけれど、庭や畠で全く気にしていなかった小さな赤アリは、玉虫の卵が大好物だったようです。この小さな赤アリも集団で社会生活をしているようで、大好物の玉虫の卵を見つけた最初の赤アリは、他の赤アリに告げ、伝言ゲームのように、短時間のうちに仲間に伝わり、大勢の赤アリが集合したのでしょう。
これは大変です。何とかしなくては、、、、、。
赤アリを追い払うこと。卵を守ること。スプレー防虫剤はあるけれど、これは使えない。赤アリと共に玉虫の卵にとつても害になるだろう。
一旦、頭を冷やして赤アリを卵に近づけない方法を考えることにしました。
夜、寝ながら考えるに、城のお堀のように虫小屋の周囲を掘って水を入れることを考えたが、これは無理です。
結論は虫小屋の周囲へ粉状の防蟻剤をすき間なくまく事でした。ここまで考えて安眠できました。
翌朝、防蟣剤を買い、実行して一件落着しました。
一難去ってまた一難、次は、産卵用のエノキやサクラが少ししか入手できない時がありました。
そこで、しいたけの原木としてよく使われているコナラなら、お金さえ出せば簡単に買えることがわかり、使ってみようと、太めのコナラの木を10本ばかり買いました。
しいたけの原木の太さはさまざまですが、長さは3尺(約90cm)です。
このコナラの木にも玉虫は産卵しました。3年後には玉虫が何匹も出てきました。
ところが、コナラを連続して使ってみると、卵は産んだけれど3年経っても、4年経っても玉虫が出て来ない木が目立ちはじめました。
そこでその木を割って見ると、木質部は白い菌でいっぱいです。
何の菌かは知りませんが、この菌が繁殖すると玉虫の幼虫は育たないようです。コナラの木の外見からは全くわかりません。
4年間も大切に保存してきたコナラの産卵木は、割って邪魔な木として捨てることになりました。この白い菌も玉虫にとっては天敵のよなものです。
昆虫には幼虫時代と成虫時代があります
幼虫と成虫で全く体形の違う形になる「完全変体」をする昆虫があれば、イナゴ、バッタカマキリのように、卵からかえった時から成虫と同じ体形の「不完全変体」の昆虫もあります。
完全変体の昆虫は幼虫時代は青虫だったり、水中の虫だったり、カブトムシのように太くて白い幼虫もあります。
タマムシ(ヤマトタマムシ)は完全変体の昆虫の仲間で、幼虫は枯木の中で木の堅い芯を食べて成長します。枯木の中の暗い所にいますから、目は不用につき、ありません。体の色は一部を除き白色です。
玉虫の卵は長円形で、長い方を計ると2㎜以上3㎜以内で、夏、20日くらいで孵化して4㎜弱の幼虫になり、枯木の芯を食べて、通常は3年で成虫の玉虫になりますが、5~6年かかるのもいます。
まれにサクラの枯木で育つと、2年で成虫になることもあります。
同じ場所にかたまりのように産んだ卵で、同じ枯木の中で育った幼虫でも同じ年に全部成虫になることはなく、留年して5年~6年かかるものがあれば、2年で成虫になる幼虫もいて不思議ですね。
幼虫の形は頭が大きく上下は扁平で、細長い腹部が続き、大きくなると全長85㎜にもなりますが、70㎜で成虫になるものもあります。
成虫になる時は幼虫の体長は、半分くらいに縮まって、70㎜の幼虫は35㎜の成虫に、80ミリの幼虫は40㎜の成虫になります。
完全に成虫になるまでは枯木の中にいて、成虫になってから木にだ円形の穴をあけ、出てくるとすぐに飛び立ちます。
まだわからないことが沢山あるので、一つづつの発見でもたのしいですよ。長い人生の趣味として玉虫を飼ってみませんか?
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